【爆発物処理班の遭遇したスピン】佐藤究の文庫本感想を書いてみた

読書
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どうも僕です。

いやあ、ソシャゲを全てアンインストしてから読書が捗る捗る。
久しぶりに好きな作家のあの本読もう、と思い部屋を漁ってみたのですが
汚部屋である宿命か、お目当ての本を探索することは出来ませんでした。
くぅ~『追憶の夜想曲』、どこに埋もれてんだよ。

その代わりといっちゃあなんですが
本屋で面白い本を発見することが出来ました。

タイトルは『爆発物処理班の遭遇したスピン』
うん、タイトル小難しいなあ。
佐藤究という人の文庫なのですが自分は恥ずかしながら存じ上げておりませんでした。

しかしこれがねぇ、とんでもなくカオスな内容だったわけですよ。
カオスなのはタイトルだけではなかったのです。

そこで今回は、『爆発物処理班の遭遇したスピン』の構成や内容をなぞりつつ
感想を書いていきたいと思います。

それでは行ってみましょう。
無敵鉄姫!!

『爆発物処理班の遭遇したスピン』の構成

全八話の短編集

この文庫本は400ページを超える文量になっていますが
一つのお話ではなく、全部で八つのお話が掲載せれている、いわゆる短編集となっております。

表題作であり、華々しくトップバッターを飾っているのが
何度も出てきた複雑な言葉の羅列である『爆発物処理班の遭遇したスピン』というわけですな。

各作品の簡単なご紹介

本作品、本当に全てが高クオリティかつ満足度の高い
非常にコストパフォーマンスに優れた作品となっております。

本当は全ての作品を事細かく、感情を乗せて、全身全霊で触れていきたいのですが
それはあまりにも面倒く……時間がかかりますので
誠に残念ですが簡単にあらすじを書いていくに留めておきます。

いやあ残念残念。

一番 爆発物処理班の遭遇したスピン

すでに説明した通り表題作 兼 トップバッターを飾る作品。
このタイトルから内容を推し量るのは不可能というもの。
そこで簡単なあらすじを。

爆発物処理班である宇原は凶悪な事件を想定した合同練習に参加していた。
しかし訓練中、別の場所で本物の爆発物が見つかる。
後輩である駒沢がその爆発物を処理しようとするが失敗、爆発に巻き込まれてしまった。

やがて犯人グループから犯行声明が届き、他の場所にも爆弾が仕掛けれれていることが判明。
解除のため宇原は知恵を絞るが、犯行の背景には非常に複雑な目論見と量子力学絡んでおり……
という、短編どころか長編が書けるだろ、とツッコミたくなるような短編です。

二番目 ジェリーウォーカー

クリエイターの苦悩と狂気が垣間見える作品。
凡人が天才になるためには、相応の犠牲が必要なのだと教えてくる
日本昔話的教訓を含んだお話。

CGクリエイターであるピート・スタニックはとある映画に登場する
架空のクリーチャー『ブレア』を生み出し、カルト的な人気を博していた。
『ブレア』はとても独特な外見をしており、皆がスタニックの実力を疑わなかった。

しかし、その裏でスタニックは非合法な活動をしていた。
想像力、そしてクリエイターとしての矜持。
それらを同時に満足させるためスタニックは今日も
生物の尊厳を弄ぶ禁忌、キメラ生成を行っていく……というお話。

三番目 シヴィル・ライツ

おそらく、現代新宿でのお話。
時代の移ろいに上手く乗れなかったらこうなるのかと痛感する。
まあ、ライフスタイルが違い過ぎて、小市民である自分は参考にならないのですが。

年々活動がし辛くなっている反社会的組織の一員である今井。
非合法な活動をしているにも関わらずその懐具合は寂しく、会社(?)の雰囲気も悪い。

そんな中、同僚(?)である菊野がバイクを盗まれるという失態を犯す。
たかがバイク、されどバイク。
会社(?)の雰囲気が悪いことも相まって、菊野は責任を取らされることになり
それが遠縁となって死んでしまう。

今井、そして同僚(?)である白滝は
反社会的存在であることのプライドと生き辛さに葛藤を抱いた結果……というお話。

四番目 猿人マグラ

某ドグラマ〇ラと某夢野〇作へのリスペクトが詰まったお話。
ちなみに僕は某ドグラマ〇ラを三回読んで、三回途中で挫折しました。
だって難しくないですか? あの三大奇書。

登場人物であり、狂言回役の『私』視点で進行する
某ドグラマ〇ラを知らなくても楽しめるお話。

小さいころの『私』は、地元で猿人マグラという謎の言葉をよく耳にしていたが
当時はその言葉の意味を知らず、友人たちも把握していなかった。
成長した『私』は猿人マグラという言葉を知っている人物と、仕事を通じて出会った。
猿人マグラへの考察を踏まえつつ、その言葉の真相を知ろうとする『私』。
そこには、おぞましい事件が関係していて……というお話。

五番目 スマイル・ヘッズ

今度は狂言回し役が『わたし』で進行するお話。

銀座で画廊を経営している『わたし』は
社会的に成功を収め、模範的な社会人としての地位を確立していた。
そんな『わたし』だが、人には言えない後ろめたい裏の顔を持っていた。
それは、シリアルキラー(大量殺人犯)のアートコレクターという側面だった。

決して違法性はないものの
犯罪者が創作した作品を病的に欲しがる異常性を『わたし』は自覚しており
周囲の人間には秘密にし、インターネットで活発に収集していた。

そんなある日、『わたし』の携帯電話に非通知番号から連絡が来る。
その内容は、執心している『ドルフィンマン』という殺人犯の作品についての取引だった……というお話。

六番目 ボイルド・オクトパス

今度の狂言回しは
週刊誌でノンフィクション記事を連載していたため『筆者』となっております。

『筆者』は引退した元刑事に取材をして
昔、犯罪者を追っていた人たちの現在を文章にすることを生業としていた。

『筆者』はおぞましい事件よりも
元刑事という特殊な肩書きを持つ人たちの余生の過ごし方に興味を持っており
彼らにとある共通した特徴があることを実感した。
それは『何かを育てる』ことだった。

そんな共通項が異常に発露した未発表の記事。
それを『筆者』が独白していく……というお話。

七番目 九三式

戦後の日本を舞台にしたお話。
当然、僕は戦後の日本を体験したことはないのですが
読んでいるだけで当時のみじめさが伝わってくるような描写でした。

戦時中、激戦区のニューギニアを体験した小野平太は
帰還してきたからは東京の浅草に下宿していた。

お国の為に戦ってきた小野だったが
戦後の日本で感じていたのは、どうしようもない惨めさだった。
貧困、混沌とした社会、希望の見えない明日。
命懸けで頑張ってきた小野の眼前には、明るい日本が見えなかった。

そんな小野にも趣味と呼べるものがあった。
それは読書だった。
とある書店で江戸川乱歩の本を見たとき
小野はどうしてもそれを手に入れなければならない衝動に駆られた。
しかし、金がない。

どうしても金が欲しい小野は、とある仕事を受けることにした。
それが覚めない悪夢の始まりだと知らずに……というお話。

八番目 くぎ

本書の最期に据えられたお話。
何故か僕はこの短編からは青春小説のような爽やかさを感じました。
なんか、風通しの良い短編なんですよね、これ。

十六歳の安樹は少年鑑別所でお世話になっていた。
収容を終えたあと、安樹は一旦実家に戻ったが、すぐに寮のある塗装屋へ就職した。

現場で徐々に仕事を覚えていく安樹は周囲で働く人間たちの観察を怠らない。
他業種の職人、仲間になってはすぐに去っていく同僚たち、海外から出稼ぎに来ている労働者。
彼らとの日常は、安樹なりの青春だった。

そんな安樹の本性は、とある現場で出会った長髪の男に触発されて
徐々に剥がれ落ちていく……というお話。

ページに潜む恐怖とスリル

本作の傾向

【爆発物処理班の遭遇したスピン】に収録されている作品の共通項ですが
得体の知れない恐怖とスリルが隅々に潜んでいます。

例えば、表題作である『爆発物処理班の遭遇したスピン』。
この短編だと犯人のイメージが全く謎に包まれています。

どのような人物(達)なのか、どのような目的なのか。
さらに犯行の手際の良さが完璧すぎて、人間味をまったく感じさせないのです。

挙句の果てに、物語全体に深く関与している『量子力学』とかいう
超絶意味不明な学問。
この学問のせいで余計に犯行が無機質なものに
コーティングされているのです。

この無機質さが、物語全体に得体の知れないスリルとサスペンスを潜ませています。

それでも読んじゃう面白さ

しかし、憎らしいのが作者である佐藤 究の筆力。
量子力学が本当に理解できないままなら「こんなの分かんねーよ」と負け惜しみを口にし
途中で読むことを投げ出せます。
ところなのですが、量子力学の説明がメチャクチャ分かりやすい!!

読書後、アウトプットすることは難しくても
物語を楽しむくらいにはインプット出来るのです。

何だかよく分からんが、とにかくそういうことなんだな
と無理矢理納得させられちゃいます。

これがね~、『そうそう、こういうのでいいんだよ』という
ちょうど良い塩梅の『やられた感』を摂取出来てしまうのです。

特に心に残ったもの

ジェリーウォーカー

これはね、明らかに非現実要素が含まれているのに
そう感じさせない設定が脱帽です。
優れたクリエイターはみんなこんなことやってのかな? と勘違いさせられてしまいます。

物語の進行と共に描写される登場人物の心情も非常にリアル。
設定に一つまみフィクションを加えているというのに
その異物感を全く感じることがありません。

『ギリギリあり得そう』という緻密な設定が非常に活きている作品です。

猿人マグラ

これはオチが非常に綺麗。
ノンフィクションを巧みに取り込むことによって
物語の説得力が段違いに上がっているように感じました。

佐藤 究、絶対に九州出身で小さいころの実体験だろ、これ。
(調べてみたら実際に九州出身の方でした、実体験は知らんけど)

ともかく。

オチこそ綺麗ですが読後感はメチャクソ胸糞。
そして、それを成立させる、かつ、納得感を上げるために取り入れられた某作家へのリスペクト。

これらを混ぜこぜして形を作り、じっくり書き上げたものがこちらになります
というテンプレートを言いたくなるような
不気味さと巧さが同居するオモローな短編でした。

まとめ

  • 全短編、外れなし。並外れた設定と筆力と想像力の塊。
  • 作者は九州出身。他にもタモさんが九州出身らしい(猿人マグラより)
  • 『爆発物処理班の遭遇したスピン』と『佐藤 究(さとう きわむ)』をセットで覚えるのムズくね?

以上です。

紀伊国屋書店で平積みされていたから手に取ってみましたが
ここまでの当たり本だとは予想外でした。

全八編、設定がバラバラなのに全部面白い。
ということは、筆者の力量は相当なモノでしょう。
つまり、他の作品も必ず面白いということです。

とりま、『追憶の夜想曲』を見つけてから本屋に他の本買いに行きます。

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