【方舟】読んでみた小説が最高に胸糞悪い結末だった(良い意味で)

読書
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どうも、僕です。

僕は他人に本を勧められると
とりあえず無条件で読むことを信条としています。

そこで知人に勧められて読んでみた小説
今回紹介する『方舟』という作品。

いや~中々衝撃的でしたね。
こんなにも胸糞悪い結末を書ききった小説はなかなかありませんよ!
(もちろん良い意味で)

というわけで、今回は近年稀にみる
トンデモ結末を迎えた方舟の感想を書いていきます。

もちろん、良い意味で!

最悪を更新し続ける『方舟』

偶然集まり、偶然閉じ込められた十人の男女

簡単に本作品の状況を説明します。

狂言回し役である柊一(しゅういち)は
大学時代のサークルメンバーたちと、山中にある謎の建築物を見に行くことになった。

その建築物は山奥の地中深くにシェルターの様に埋められた建物で
今は誰も使用しておらず、明らかに人目を避けるように造られていた。

建物の中には図面があり、建物の名前が『方舟』であることが判明する。
『方舟』はかなり広大で、長い間放置されたいたにも関わらず
たくさんの人間が長期滞在できるようになっていた。

柊一たちが好奇心で建築物を探索している最中
新たな訪問客たちが現れた。

それはキノコ狩りに来ていたという矢崎一家。
父、母、子という構成の矢崎一家を含め
すっかり日が暮れてしまい、下山するのは危険すぎると判断した柊一たちは
そのまま『方舟』で一晩過ごすことになる。

しかし、滞在中に大きな地震が発生。
幸い、地震による負傷者はいなかったが
この巨大な地震により、柊一たちが入ってきた『方舟』の扉が大岩で塞がれてしまった。

こうして柊一
柊一の元サークルメンバーたち六人
矢崎一家の三人
そして、本作で探偵役を務める、たまたま付いて来ていた柊一の親戚の翔太郎

合計十人は『方舟』の中に閉じ込められてしまった。

設定されてしまったタイムリミット

いやあ、簡単に状況をまとめてみたのですが
すでにこのあらすじでメチャクチャ息苦しいですね。
人見知りMaxの僕ならこの時点でもう限界突破していますよ。

しかし、『方舟』の最悪はこんなものじゃ留まらないのです。

『方舟』に閉じ込められたことを把握した十人には
まだ冷静で、理性的でした。

皆で脱出するためのアイディアをそれぞれ出し合い
状況を確認します。

幸い、地下二階には扉を塞いでいる大岩を動かすための装置が存在しており
それを動かせば大岩を階下に落とすことが分かりました。

しかし建物の構造上、大岩を移動させると装置のある部屋に
大岩が落ちてきてしまいます。
つまり、脱出するためには人間一人が地下二階に閉じ込められてしまうのです。

ただ、まだ最悪ではありません。
だって閉じ込められたとしても、他のメンバーが助けを呼びに行けば
最終的に全員無事に脱出できるからです。

しかし、ここで最悪が一つ更新されます。

それは、『方舟』が溜水により
少しずつ水没していることが判明するからです。

これはつまり、タイムリミットが設定されてしまったということです。

理性が壊れた瞬間

タイムリミットが設定されたことにより
皆の為に地下二階に残り大岩を落とした人間が
溺死してしまう可能性が出来てしまいました。

人間一人、閉じ込めるのを避けたい柊一たちは
何か打開策がないか『方舟』の探索を続けます。

そこで、いよいよ人間の恐ろしさが露見します。

柊一たちの元サークルメンバーで
柊一たちを『方舟』に導いた裕哉が
死体となって発見されたのです。
しかも、明らかに他殺だと分かる状態で。

殺人事件が発生することによって
ようやく『方舟』の舞台が完成します。

柊一たちはタイムリミットまで『方舟』を脱出しなければ
全員溺死してしまいます。
それを防ぐためには、地下二階で装置を起動させ、大岩を階下へ落としてしまえばいい。
しかし、装置を動かした人間は閉じ込められてしまい
ほぼ確実に溺死してしまう。

では、その犠牲者をどうやって選べばいいのか。

裕哉を殺した罪人にその業を背負わせればいい

残された九人に、その共通認識が生まれたのです。

愛憎渦巻く人間関係の成れの果て

『方舟』に残された生存者たち

ここで一旦、『方舟』に残された生存者たちを確認しましょう。

  • 読者と同じ目線を持つ 柊一
  • 柊一の親戚でロジカルな思考が出来る 翔太郎
  • 柊一の友人でジムのインストラクターをしている 陵平
  • 柊一の友人で陵平の妻でもある 麻衣
  • 柊一の友人で事務員をしている 花
  • 柊一たちの後輩でヨガ教室の受付をしている さやか
  • 電気工事士をしている矢崎幸太郎
  • 矢崎の妻である 弘子
  • 矢崎夫妻の息子である高校生 隼斗

以上の九人が、殺人事件が行われたあとの登場人物であり
この九人の中に、裕哉を殺した殺人犯が確実に潜んでいるのです。

疑心暗鬼で睨み合う人間

タイムリミットが出来てしまい
殺人犯と『方舟』の中で過ごさなければいけなくなった九人は
尋常ではないストレスを受け続けることになります。

その結果
まず、柊一たちと矢崎一家は対立し始めます。
そりゃそうでしょう。
この二つの派閥は初対面ですからね。
両方、怪しく見えるのも当然、殺人犯なんかと一緒にいたくないでしょう。

そして、陵平と麻衣の夫婦間のこじれが表面化
さらに、元々麻衣から相談を受けていた柊一も加わり
分かりやすい三角関係に発展していきます。

全員とは言いませんが
こうなってくると、良くない感情を抱いている者同士の協力は絶望的。
建設的な会話が難しくなり、いよいよ雰囲気は重苦しくなっていきます。

罪悪感と生への執着の葛藤

敵や味方がカテゴライズされていく中
柊一はもちろん、九人の中には共通した認識があります。

それは生きて地上に出たいということ。
そしてそのためには、生贄を一人用意しなければいけないということ。

本来ならば、犠牲者を一人選出するのは心情的に難しいものがあります。
だって、残った一人にみんなの為に死んでね、と告げるのと同意ですからね。

しかし、この追い詰められた状況において
皆にとって最高の免罪符があります。

それは、『殺人犯は人を殺しているので、地下に取り残されてもしょうがない』

口にこそ出していませんが
これは皆の中で暗黙の了解となっています。

そして、この共通認識が本作品において
最も強い犯人捜しの動機となっているのです。

『方舟』の最悪に立ち向かう犯人

犯人も共通認識は理解している

それではどうして犯人は裕哉を殺したのでしょう?
一見、犯人にとって裕哉を殺すことはデメリットしかありません。

まず一つ目の理由、生贄の最有力候補は裕哉だったのです。
なぜなら、柊一たちは裕哉によって『方舟』まで来ました。
つまり、閉じ込められた責任を裕哉に押し付けやすく
裕哉を生贄にしやすい状況だったのです。

殺人を起こすことは
犯人にとって生き残る確率を下げる行為のように思えます。

そして二つ目の理由、殺人を犯したことがバレると生贄にされる確率が高くなるということです。
皆は裕哉が死んだことで、次の生贄候補を考えます。

そこでうってつけなのが、裕哉を殺した殺人犯です。
人を殺した人間なのだから、罰を受けるのは当然だ。
そういう論理が、無意識に皆の頭の中に出来上がっているのです。

つまり、犯人は犯行がバレてしまうと生贄にされてしまいます。
そしてここが重要なのですが、犯人はそのロジックを充分に理解しているのです。

充分に理解したうえで、犯人は裕哉を殺したのです。

犯人の目的は?

一見、自殺行為にも等しい犯人の犯行。
それでは、犯人の目的は一体何なのでしょうか?

もちろんそれは決まっています。
犯人の目的、それは生きて地上に出ることです。
犯人はそのために、裕哉を殺したのです。

最高に胸糞悪い結末

作中、柊一の親戚である翔太郎は
非常に冷静で論理的な思考を巡らせます。
それは、一般人の枠を超えた、素晴らしい頭脳でした。

しかし、犯人はその翔太郎よりも明快な頭脳を持っていたのです。
とても狡猾で、とても残酷で、とても大胆で、それでいて少しだけ人間を信じたかったのです。

この犯人の計算し尽くされた言動が
物語の結末を最高に胸糞悪いものに彩ります。

何回も言いますが、これは良い意味で、です。
スゴイ誉め言葉なんですよ、これ。

だって、文章だけでこんな結末を用意するのは並大抵のことじゃありません。
読後感が良い、という言葉がありますが
この作品はその逆で読後感が最悪なのです。

文章だけでこの読後感を書ききった作品は
僕は他に知りません。
あったら教えてほしいくらいです。

本当に最初から最後まで
隙間なく息苦しさを味あわせてくれる作品でした。

まとめ

  • 知らない場所に行ったら危ない
  • 夕飯までにはお家に帰ろう
  • (良い意味で)を付ければ、だいたい誉め言葉になる

以上です。

そう言えば、本編で触れるの忘れていたのですが
『方舟』の作者は夕木 春央という方です。
この本を勧めてくれた知人は同作者の他の本も勧めていたので
今度、それも読んでみようと思っています。

気分が落ち込んでも平気なときにでも。

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